ペルソナ達の午後
私が〆ます 冬音謳歌
ゆらり
戦塵の中、雪音は地に伏した姉を足蹴に、遠い目をしていた。
「戦いは終った」
呟いてみる。
「……容赦ないわね」
「鬼ですね」
「私も気をつけないと」
春菜姉妹各々が正直に感想を漏らす。
「あ、終りましたね」
幼い少女の声に一同ははっと正気に戻った。
雪音は新たに登場した彼女に身構える!
「き、貴様はっ!」
対する彼女は敵意を露わにした雪音に優しげに微笑んでいる。
小学低学年くらいであろうか、まんまるな瞳には全くと言っていいほど邪気がない。
「雪音お姉ちゃん、こんにちわ」
無邪気に彼女に駆け寄った。
「来ないでよ、冬音! アンタとアタシはキャラがかぶるんだから!!」
「いや、きっぱりと申し上げても全然さっぱりかぶってないよ、雪音ちゃん(どず)ぐふぅ!」
くーの制裁に移る雪音を苦笑いで見つめながら、冬音は懐から薬を一錠取り出す。
「冬音、それは何?」
絢夏は首を傾げて冬音の手の中にある水色のカプセルを指差した。
「これはね、さっきマイクロトレンドさんから送られてきたお薬だよー」
言いながら冬音は気を失った乙音の口に薬を放りこむ。
びくん!
「「?!」」
乙音が大きく痙攣した。
一同は思わず距離を置く。
びくびくびくびく
人にあらざる痙攣を全身であらわし、無表情のまま地面でのた打ち回る乙音。
「ひぃぃ、あ、姉上!?」
「きしょ!」
正直な感想の絢夏。
不意に乙音の痙攣が止まった。
と、
乙音はブリッジをしたかと思うと、絢夏に向かってカサカサと急接近!
「ひぃぃぃぃ!!」
「エクソシストかっ?!」
ブリッジのまま、恐怖に座りこんでしまった絢夏に飛びかかる乙音。
薄情にも絢夏から距離を取る一同。
「きょしょい言ってごめんなさーい!!」
絢夏の叫びも虚しく、
ごす!
飛びかかった乙音の頭と絢夏の頭が激突、二人はそのまま動かなくなったのだった。
「うっ」
「姉上?」
うっすらと目を開ける乙音。
その視界の先には彼女の妹分である雪音がいた。
「私は…」
痛む頭を押さえて乙音は身を起こす。
「変なダイレクトメールから出てきた粉を吸いこんで……」
「ウィルスに乗っ取られていたんですよ、冬音の持ってきたウィルスバスターで除去したところです」
「あら、春菜さん」
「雪音さんが一生懸命に乙音さんを取り押さえたんです。ね?」
「あぅ、そ、そうね」
メガネの奥に怪しい光を放つ観秋に言われ、雪音は引きつった笑みで頷く。
今後これをダシにされるに違いない。
「そう、なるほどね」
乙音は頷き、眩しそうに雪音を見つめた。
「雪音。大きく……なったわね?」
「な、なんです、その一瞬の沈黙は! 疑問は! それに胸を見てゆーな!!」
一同にようやく安堵の笑みが広がる。
そう、このPC内からウィルスであるMSブラスターが完全に排除された瞬間だった。
「うっ、いたた…」
少し遅れて目を覚ます絢夏。
ペルソナ達はまだ知らない。
乙音と頭をぶつけた瞬間、絢夏の中に変異したMSブラスターが乗り移ったことを。
そしてそれが亜種として、再びこのPC内に嵐を呼び起こすことを………。
お・わ・り♪
≪CAST≫
【春菜】
P社管理の最古参ペルソナ。かつてはポニーテールと清楚な佇まいから幾人物ユーザーを虜にした。
四姉妹の長女であり、全てのペルソナの模範であり、基本的な機能全てを備えている。
最近は若い妹達を気にしてか若作りに励んでいるのは、グラフィックが変更されるごとに認識される周知の事実である。
CVは森村みどりさん。
【絢夏】
P社管理の四姉妹が次女。かつてはペルソナ作成用サンプルとして存在しており、多くのペルソナは彼女を解析することから作成が始まることとなっていた。
このたび念願のデビューを見事に果たし、姉を追い抜く日を夢見て精進している。
CVは麻生沙貴さん。
【観秋】
P社管理の四姉妹が三女。ツインテール&メガネっ娘、および僅かにロリ属性を持ち合わせており、また文学少女というあらゆる萌え要素をカバーしている。
強敵である二人の姉に対抗する為の自衛とも思われる、これら萌え要素を武器として狡猾に活動を続ける策略家としての一面も(?!)。
CVは佐倉涼さん。
【冬音】
P社管理の四姉妹の末っ子。まだ幼く、人見知りのするお年頃であり、三人の姉によって過保護にされている部分もあり。
最近では姉以外のペルソナに感化されたのか、先達である姉達の欠点をチェックし自らは二の轍を踏まない様に気をつける安全思考となりつつある。その辺りの潜在的な部分に雪音が反応しているのだろう。
CVは高坂奈々さん。
【乙音】
えれくとら管理の新/旧Ver対応ペルソナ。ペルソナウェアのバージョン切り替え時である一年半ほど更新公開されており、現在では完成体として更新なしの公開となっている。
おっとりとした性格であり、真性のボケキャラ。攻撃手段としてはダイエットの際に覚えたボクシングでアッパーカットを得意とする。
CVは羽月セレネさん。
【雪音】
えれくとら管理の乙音の妹。ペンギンの姿を模した「くー」を相棒として、デスクトップの端でメモリを食らっている。姉と同じくナイ胸を気にしており、指摘されると烈火の如く怒る。
足技(蹴り)を得意としており、某ベトナム軍の軍曹に習ったカポエラの亜種という噂もある。
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