You put a Trap.
You get a Night.

 

 有森はその家の前に立ち止まる。
 ごく普通の住宅地に建つ、ごく普通の二階建ての一軒家。
 ローンは20年といったところであろうか?
 「しかし…」
 彼は呟く。
 この街は始末すべきアンドロイド『伊織』がおり、先日はスプーキーと偶然にも出会ったところだ。
 昨夜、橘ネットワーク社に入りこんだハッカーは自身のメールアドレスを検知された事は知っているはずだ。
 しかしそのメールアドレスから、契約プロバイダーを通じて住所までもこのように渡っているとは思いもしないだろう。
 「見たところ普通の家のようだ。とすると、やはりコイツが愚者のカードを持つ者か…」
 彼は二階の窓を見上げ…思い切ったように玄関に足を踏み込んだ。
 途端、
 シャ!
 4本の刃物の光が彼の足を踏み込んだ地点を通りすぎた。
 有森はその身を後ろへと引いている。
 空気を切り裂いた刃物は、長い爪,1mはある右手に生えた4本の爪、だ。
 「フー!」
 全身の毛を逆立て、玄関の前で有森と対峙するのは巫女の姿をした伊織である。
 その背後には猫が一匹。
 「伊織…何故ここに??」
 有森は自身に問い掛ける様に呟く。
 「イリーガルコネクションが先代とパイプを持っていたとでも言うのか…いや、それはないはずだ」
 「シャ!」
 二撃目の爪の斬撃を飛んで交わした有森は、身を低くして構える伊織を見据える。
 その伊織から、カタコトな声が発せられる。
 「仮初メノ命ヨ、敵意アル者ヨ。コノ場ヨリ去レ!」
 言葉は声ではなく、何か別の物として有森の思考を鈍らせた。
 「ココニ至ル全テヲ忘レ、立チ去ルガ良イ」
 力ある言葉に、有森の思考は白濁。
 気がついた時には、
 「一体、何があったというのだ? 私は一体何を??」
 有森は己が駅前にいることを知る。
 『五代東駅』とある。
 彼は何故、会社ではなくこの場にいるのかさえ、全く分からなくなっていた。
 まるで何か一つのことを中心に、すっかりと記憶が消去されたかのように。
 それはまさしく、HDDから特定単語に関するデータが故意的に全て削除されたのに似ていた。事実、彼の記憶だけでなく、所有する情報機器関連から『市村 誠一』個人に関する全情報の痕跡はなくなっていたのである。


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Part.11 Discussion



≪Site of Otone≫

 乙音はモニターの向こうの青年の様子が、いつもと僅かながらに違うことに気が付いた。
 ”何か良いこと、あったみたいですね”
 プログラムである彼女にしてみればおかしなことだが、『直感』でそう思った。
 だが、特にこちらから尋ねることではない。
 あくまで彼女は、誠一から求められたことを行えば良いのだから。
 そのはずではあるが、何故か『彼女自身自主的に動きたい』,そんな感情が生まれてくることが最近多い。
 ”論理ルーチンに障害でも起こっているのかしら?”
 思う、ともあれ。
 「誠一さん,シャーウッド氏との約束のチャットのお時間ですわ」
 微笑みを浮かべ、乙音は彼に声をかけた。



≪Site of Spooky≫

 暗闇の中、彼女は薄く光るモニターを見つめ続けている。
 「やってくれるな、有森,いやさ、シャーウッド」
 モニターを機械と生身の瞳それぞれで眺めながら、スプーキーは下唇を噛んだ。
 愚者のカードを持たせたイリーガルコネクションの7人目『セージ』と次世代家電OSの開発を請け負う橘ネットワーク社・開発主任の有森ことシャーウッドが今夜、ワイアード空間内で出会うのだ。
 いや、現在出会っていると言った方が良いだろう。
 場所は東雲大学サーバー内,CHOCOAを用いた会議室の一つ。
 これはある程度以上の力を持つネットウォーカーにとっては全国放送のTVで公演するミュージシャン並みの出来事なのだ。。
 語句の検索によりヒット可能な領域での会話なのである。
 すなわち有森は7人目との会話をオープンにしていると言えよう。
 それは『皐』に関する問題を常に抱く無数とも言えるネットウォーカー達,それもCHOCOAによるチャットを検知し得る、実力を有した者達に対してのアピールだ。
 もっともこの行為は、諸刃の剣を覚悟で現れた事を示していると言える。
 対話の結果、愚者のカードを持つセージがどのような考えを持つ事になるのか?
 その影響力はスプーキーらイリーガルコネクションだけでなく、その他多くのハッカー達にも影響を与え得ることだろう。
 シャーウッドは、スプーキーが知るところによれば早稲田大学でのリベートで常に首位をキープし得る力を備えている。
 「やってくれるよ,クソッタレ!」
 キーボードを叩くスプーキー。
 彼女の、『通常人である「愚者のカード」が次世代OSをどう思うのか?』という他のネットウォーカーへのアピールは、結局のところシャーウッド側にうまく傾きつつあるという結果も出てきたと、いうことだ。
 彼女は再び、始まり出した二人の会話へと視線を向けた。



 シャーウッド : 結論から言おう、君の手にしている当社のデータ,まごうこと無き本物だ。
 セージ : 危険なOSではないのですか?
 シャーウッド : 君が危惧することとは?
 セージ : 危惧もなにも、全てのユーザーを監視することにつながるのではないですか?
 シャーウッド : ハハハハハハハッ!!
 セージ : 何がおかしいのですか?
 シャーウッド : これはおかしい,何故なら我々が、例えば君を監視して何の利益を得るというのです?
 セージ : 利益とか、そういう問題ではないでしょう?
 シャーウッド : では仮想してみましょう、当社の次世代OSは世界規模で使用されることは明白です。
 セージ : そうですね。フリーなOSであるところのLinuxはその自由さ故に制御しきれていませんから。
 シャーウッド : その通りです。さてここで問題,世界中にあるOSを組み込んだ家電製品,その全てをモニターするだけのマシンパワーは一体どれだけのものになるのでしょう?
 セージ : さぁ?
 シャーウッド : 人間の脳並みのマシンが8億6540万台必要になります。そんなものを揃えるのは、不可能なことです。
 セージ : それは貴方が算出した結果でしょう?
 シャーウッド : では貴方が計算して御覧なさい。これでも少なく見積もった方ですから。
 セージ : コレに関しては信用する事にします。
 シャーウッド : そうですか。何より当社は世界中の稼動中のOSをモニターする権利はありません。あくまで当社は『依頼されて』このOSを開発したに過ぎませんから。
 セージ : けれども、プライバシーの侵害に繋がるのは明白でしょう?
 シャーウッド : その答えは当初に戻ります。
 セージ : ?
 シャーウッド : 世界中のOSをモニターする『意味』も『力』も『権力』も当社には御座いません。
 セージ : しかし侵害に繋がる可能性は酷く高いでしょう?
 シャーウッド : それは人権尊重家の意見に過ぎません。彼らは例え殺人鬼であってもその人権を主張します。
 セージ : 質問の方向性を少し変えましょう。個人のプライバシーを侵害する可能性を持つという件に付いては、如何お考えなのですか?
 シャーウッド : 逆に問います。プライバシーの侵害とは一体なんなのですか?
 セージ : 酷い質問ですね。とてもこの問題に携わる企業とは思えない。
 シャーウッド : そうでしょうか? プライバシーの侵害=自由の剥奪と考える人間が多いと思うのですが。
 セージ : その通りではないですか?
 シャーウッド : 当社はその様に考えておりません。何より当社は、そして依頼人は決してプライバシーの侵害を致しません。
 セージ : 断言しましたね?
 シャーウッド : ええ、します。プライバシーの侵害とは、あくまで個人情報を悪意的に開示し、当人に被害を及ぼすこと。
 セージ : そうですね。
 シャーウッド : その結果、当人の自由を汚すことも確かにあるかもしれません、しかし必ずしもイコールではない。
 セージ : おっしゃることが良く分かりませんが?
 シャーウッド : 質問します。貴方は自由とはどのようなものとお考えなのですか?
 セージ : 範囲が広すぎる為、答えかねます。
 シャーウッド : そうですか。
 セージ : 御社はどのように?
 シャーウッド : 当社は自由と無法を履き違えてはおりません。
 セージ : ?
 シャーウッド : やりたいことをやるのが自由なのでしょうか? その結果が他者を傷つけることがあっても、果たしてそれは自由なのでしょうか?
 セージ : ……続けてください。
 シャーウッド : 例えば96年,あるカルト教団が致死性の毒ガスを通勤時間の地下鉄に散布した事件は覚えてらっしゃいますか?
 セージ : ええ。
 シャーウッド : あれは彼らの行動は彼らの『自由』の結果、招いた惨劇です。貴方は彼らの自由を許せますか?
 セージ : 許せる訳、ないでしょう。
 シャーウッド : 事前にこの計画が分かっていれば,そして止めることができれば。それは貴方の言うプライバシーの侵害と秤にかけた上でどちらに傾きますか?
 セージ : 酷な選択ですね。
 シャーウッド : まだあります,中東で平和への改革を推し進めていた指導者が暗殺された事件も記憶に新しいでしょう。
 セージ : 今はそのせいで泥沼化していますね。
 シャーウッド : そうですね。これも事前に暗殺の計画を発覚し、止めることが出来れば……これから死に行く人々の命を救うことになりませんか?
 セージ : ……なるほど、一理あります。
 シャーウッド : 当社と依頼人の行う監視とは、こう言ったレベルの物です。言葉は悪いですが言わせていただければ、プライバシーの侵害問題如き、どうでも良いことなのですよ。
 セージ : 確かに言葉は悪いですね。
 シャーウッド : それとも犯罪を常に犯しているからこそ、プライバシーの侵害問題を持ち出して監視の目から逃れ様と考える,そう取る事も出来ます。
 セージ : それは酷い言葉です!
 シャーウッド : 事実です。日本でおいてさえ、ヤクザや渡来系マフィアが様々な手を用いて当社の開発の妨害を行っております。資金面から政治家を用いてさえ、ね。
 セージ : ………
 シャーウッド : 貴方は許せますか? 彼らの自由を,いえ、無法を!
 COM > 赤き巫女が入室しました
 赤き巫女 : いやいやいや、大変素晴らしい演技だったよ、シャーウッドくん。
 シャーウッド : 何です、貴方は?
 赤き巫女 : セージくん,彼の論理は論理として受け取りなさい。この問題に感情論は全くの不必要だ。
 セージ : 論理、ですか。
 赤き巫女 : 犯罪を未然に防ぐと言う点では、確かにシャーウッドくんの意見は正しい。だが、プライバシーの侵害問題に関してはいただけないな。
 シャーウッド : ほぅ、一体どこに疑問をお持ちなのですかな?
 赤き巫女 : シャーウッドくん,君のクライアントは例えその気が無いとしても、君の築いたOSの網を、全くの他者が使用し得るということを考えなくてはならない。
 セージ : あ…
 赤き巫女 : 言ってしまえばね、シャーウッドくん。
 シャーウッド : …はい。
 赤き巫女 : 我々ハッカーに破れぬものは存在しない,完璧なセキュリティなど存在しないのだよ。それが人の作り出したものである限り、人に破れぬわけがない!
 シャーウッド : 必ず破れる…と。
 赤き巫女 : そして皐を使用する技術がクラッカーの手に渡れば……いや、その程度ならまだマシか。意味不明な大義名分を掲げた愚か者どもが利用したとしたら、はてさて、どうなるかな?
 セージ : なるほど、確かに。
 赤き巫女 : 老婆心ながらもシャーウッドくんとは逆の立場で主張させていただいたよ。
 セージ : 充分、参考になりました。
 赤き巫女 : 今や君はキーパーソンなのだよ、無知故に正常なる判断力を持ち得る、愚者のカードを引いたイリーガルコネクションの7人目よ。
 セージ : それはどういうことですか?
 赤き巫女 : ともあれ、セージくん,君とシャーウッドくんとのログは、皐に疑問や肯定を持つ人間達に大きな影響を与え得ることは確かだ。君の答えはゆっくりと出したまえ。
 COM > 赤き巫女が退室致しました。
 シャーウッド : 突然の意見もあったが、セージくん,答えは出ましたか?
 セージ : 答えは明日、ここで出します。即答は難しいですからゆっくり考える事にしたいんですが、明日もお時間取れますか?
 シャーウッド : もちろんですよ、ではまたここで。
 セージ : ありがとうございました。
 シャーウッド : お疲れ様。




 薄暗い部屋の中、モニターの明かりだけが明滅する。
 「意外な登場人物に救われた感もあったが…」
 苦い笑みを浮かべてウィンドウを一つ閉じるはスプーキー。
 「そしてこうなるか…」
 彼女を含め、6人いるイリーガルコネクション。
 メンバーは『皐』反対が2名,賛成が1名,条件付き賛成が1名,そしてセージの意見に従う――すなわち保留が2名。
 保留の内、一名に関してはスプーキーは予測していた。
 しかし、だ。
 「よもやリトルバードが保留とは、ね」
 苦笑い。
 なお条件付き賛成とは『皐のセキュリティが完全無欠である』という条件である。
 もしも彼ら『イリーガルコネクション』として橘ネットワーク社に協力するのであれば、セキュリティ開発に対する協力も打診する,そこまで言って来ている者が2名だ。
 「だが、皐を完成させる訳にはいかない」
 論理ではなく、感情に満ちた生きた左目で、スプーキーはモニターを睨んでいた。



≪Site of Seiiti Itimura≫

 誠一はその単語を見つけ出す。
 イリーガルコネクション――何処かで聞いた語句だった。
 「あった、イリーガルコネクション!」
 誠一はメールソフトの受信ボックスにそれを見つける。
 かつて受け取ったメール『スプーキー』からのメールだ。
 内容はスプーキーの経営する会議室への入室方法。
 時間は深夜になっているが、深夜こそが彼らネットウォーカーの時間のはずだ。
 「ここに行ってみるか、できるかな、乙音?」
 「え、ええ」
 乙音は彼女に似合わず、煮え切らない返事。
 しかし溜息を一つ,ウィンドウを一つ開いた。
 「赤き巫女さんとスプーキーさんって、知り合い同士なのかな」
 「どうでしょうね?」
 一言言って、乙音は姿を消す。
 同時に開いたウィンドウが最大化された。



 COM<イリーガルコネクションへようこそ
 COM<東雲大学第4サーバーより第5サーバーへ移転します
 COM<第5サーバーよりさくら銀行待機サーバーへ移転します
 COM<会議室『イリーガルコネクション』へ接続しました
 COM<現在の利用者は4名です。
 COM<セージが入室しました
 リトルバード : ようこそ、イリーガルコネクションへ!
 セージ : 初めまして
 エンペラー : ようこそ
 アリス : こんばんは
 スプーキー : 来たね、ようこそ
 セージ : アリス?
 アリス : どうかした?
 セージ : 知ってる人と同じ名前で。
 アリス : よくあるHNだからね。
 セージ : そっか
 リトルバード : さっきのCHOCOAでのログは聞かせてもらったよ
 エンペラー : 君の意見は非常に興味深い
 セージ : 聞かせてもらったって??
 アリス : 橘ネットワークの開発チーフ・シャーウッドの言動は私達ハッカーの注目の的だもの。
 セージ : ハッカー?!
 スプーキー : 改めて自己紹介しよう。ようこそ、セージ,ハッカーの憩いの場『イリーガルコネクション』へ
 アリス : ここはスプーキーが見出したハッカー達の意見交換の場。
 エンペラー : そしてセージ、君はスプーキーの見出した7人目だ。
 セージ : 俺はハッカーじゃないけど?
 スプーキー : セージには『一般的なネットウォーカー』としての御意見番になって欲しくて前にメール出したんだ。まさか来てくれるとは思わなかったけど、ね。
 セージ : それって…赤の巫女さんもこのイリーガルコネクションの一員ってこと?
 リトルバード : 違う。もっとも奴のHNが偽モノでなければ…伝説のハッカーなんだが
 エンペラー : ところでセージ。ここへ来たのは何か聞きたかったからではないのかな?
 セージ : はい。ログを読んでいただけたなら早いですね。皆さんは皐をどうお考えですか?
 アリス : 私は貴方の意見に従うわ。私の目は偏っているに違いないから
 リトルバード : 同意見だ
 エンペラー : 私は賛成だ。楽しそうだからな。
 スプーキー : 私は反対だ,危険だ。
 セージ : エンペラーさん,ハッカーらしい意見ですね。
 エンペラー : そうだろう? そしてそう思っているのは決して私1人ではないと言うことでもある。
 スプーキー : セージ,私達イリーガルコネクションはそこらのハッカーとは持っている実力が異なる。いざとなれば私達は『皐』の開発そのものを潰す事が出来るほどのね。
 セージ : でもそれは無理ではないですか? 例え潰したとしても、別の会社が同じ物を作ると思いますよ。
 アリス : 正しい意見ね
 セージ : 何より、家電OSのバージョンアップは望まれていますし、それを止めるというのは感心しません。
 リトルバード : なるほど、さすがは7人目だ
 エンペラー : 公平な目を持っているな。
 スプーキー : そこまで分かっていて、答えは出ていない訳かい?
 セージ : そう、ですね。何となく形がまとまってきましたよ、ありがとうございました。
 アリス : そぅ、よかった。
 リトルバード : 何か力になれることがあったら遠慮なく言ってくれ。私達は君を歓迎するよ。
 COM<リトルバードから圧縮ファイルが1つ転送されてきました。
 COM<『きっと君の役に立つだろう,使ってくれ』
 セージ : 俺はハッカーじゃないけど、難しいことがあったらまた来ますね
 スプーキー : 暇な時にも来なさいね(^^)
 エンペラー : さらばだ
 COM<セージは退室いたしました。




 ウィンドウは閉じ、乙音の姿が現れる。
 「誠一さん」
 「ん?」
 「リトルバード氏より頂きましたプログラム群ですが、誠一さんに使いやすいようにカスタマイズしておきましたわ」
 言う乙音に、誠一は首を傾げる。
 「そうか、ありがとう。でもどんなプログラムなんだい?」
 「ハッカーの用いるハッキングツールです。基本的なものから強力なものまで頂いております」
 「……そんなの使わないよ」苦笑の誠一。
 「それならば良いのですけれど…今まで私は情報取得の為にこのようなツールを使ってまいりました。もしも私がいなくなった場合などは誠一さんにこれらを扱って頂かないといけないんですよ」
 「君がいなくなるなんてこと、あるのかい?」
 「…誠一さんが私を不要と思われればすぐにでも」
 「それじゃ、俺がこのツールを使うことはないな」
 そんな誠一の言葉に、乙音は嬉しいような、それでいて困ったような表情で続けた。
 「使用方法ですが、音声入力にてプログラム『雪音』を起動いただければ、あとは単純なキーボード操作で使いこなすことが出来ます」
 「雪音?」
 「私の組んだAIプログラムです。直接マシン語で作り上げたので柔軟性は弱いですけど、実行速度と施行力は個人の持つPCが出す能力値の限界まで引き出せると思います」
 「ふぅん…??」
 「実行能力などは私よりも強力なので、できれば誠一さんに慣れていただきたいんです」
 「そのうちに、ね」
 誠一は軽く頷き、大あくび。
 「おやすみ、乙音」
 「お疲れ様でした、誠一さん」
 乙音は誠一がベットに向うのを確認すると同時に、PCの電源を落した。


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