15. 復活の世界へ!

 ルーンの私室にてアフラ達は今までの報告と今後について話し合っていた。
 ストレルバウとロンズも顔を見せている。
 お茶を飲みながら気楽にといきたかったのではあるが二人を除き皆暗い表情をしている。
 「という事はアフラ様。まだはっきりとした事は解らないと」
 「そうどす。申し訳ないんどすけど今持っている情報だけではちょっと」
 「いえとんでもございません。はるばるマルドゥーンからお疲れの所をすぐに診ていただき本当に感謝しております」
 「そうだよアフラさん。元気だしてがんばろう。明日もあるんだし」
 「そうですねファトラ。前向きに考えるのは必要な事ですね」
 「はい。ルーンお姉様」
 ルーンとファトラだけは元気だ。
 「ほんまファトラはん。元気どすなあ」
 「うん。だからアフラさんも元気出してよ」
 何がだからなのか良く分からない、思わずアフラはそっと笑う。
 「そうそう、アフラさん。笑った方がずっと素敵だよ」
 えっ、という顔をするアフラ。
 今まで「澄ました奴」とか言われたことはあったが(by シェーラ)笑った方がと言われたのは初めてのような気がした。
 「アフラさんさあ、この部屋に来てから全然笑わないんだもの。さっき中庭にいた時はよく笑っていたでしょ」
 「そうどすな。しかし今は、まあ言わば業務中どすからな」
 「お仕事中は笑っちゃ行けないの?」
 「そういう訳ではないどすえ。そやけどうちも大神官の肩書きを持ってますからなあ笑ってばかりという訳には」
 「ふーん、不便だね大神官と言うのも」
 「不便どすか」
 「うん。だって笑いたい時には笑って、泣きたい時には泣かないと」
 「ふふふ、ファトラはん面白い事を言わはる。確かにそうどすな。人間笑い時、泣きたい時ありますからな」
 「そうだよアフラさん」
 「だけどファトラはん。人間常に感情のままにという訳にはいかんどすえ」
 「どうして?」
 「感情というんは回りの人にも影響しますからな」
 首を傾げるファトラ。
 「例えばファトラはん、今あんたの隣におる誠はんやが」
 一瞬誠はぎょっとする。さっきから菜々美達の視線が気になってしょうがなかったのだ。
 そんな事は気にせずアフラは続ける。
 「例えば誠はんが辛そうな顔をしてたらどないします」
 「それは勿論理由を聞いて、元気付けたり」
 「そうですやろ。しかしその事でファトラはんも不安になるかもしれへん」
 「そう、だね」
 「誠はんはやさしいお方や、ファトラはんにそないな思いさせとうないから無理してでも笑うやろ」
 「…」
 「なファトラはん、人間いつでも好きな時に笑い泣く、それができるとは限らんのが分かったやろか」
 ゆっくり頷くファトラ。
 「それが許されるんは子供だけやね」
 「子供だけ…」
 ファトラは考え込む。自分は今まで笑い泣きそして思った事を言ってきた。
 だけど回りの人達の事はそれをどう感じていたんだろう。
 いやそれよりもみんないつも笑っていたが実際はどうだったんだろう。
 ファトラはルーンの方を向いた。
 この人は自分の姉だと聞いていた。だからお姉様と呼んでいたのだ。
 だけど今ファトラにはその記憶はない。自分が分からないまま姉と呼んだ事はこの人にはとても辛かったのではないか。
 「ルーン…お姉…様」搾り出すように名前を呼ぶ。
 「何ですかファトラ」笑顔で返すルーン。
 ファトラは突然涙が込み上げてきた。
 自分はこの人にひどい事をしていたのかもしれない。だけどこの人はそんな事を全然感じさせない。
 いやそれ所か笑顔で迎え入れてくれる。
 「どうしたのですかファトラ。涙なんか流して」
 ファトラは溢れ出てくる涙をどうする事もできなかった。
 「お姉様ごめんなさい。私、私…」
 ルーンは優しくファトラを抱きしめる。
 「ファトラ、泣きたいだけ泣きなさい。私はいつでもここにいますよ」
 ファトラは泣き続けた。ルーンは黙ってファトラを抱きしめ見守っていた。
 ややあってストレルバウがそっと口を開く。
 「侍従長。姉妹が愛情を込めて抱き合っている。感動的な光景ではないか」
 ロンズは涙していた。
 「そうですなぁ博士。私も姫様達を御育てした甲斐があったというものです」
 「ファトラさんどうしたのかしら。考え込んだと思ったら泣き出しちゃったけど」
 同じく呟くように菜々美。
 「知るかよ、だけどファトラにあんな所があったとはなあ。見直したぜ」
 「ううっ、感動的ですぅ、ファトラ様ぁ」
 と、その時。
 「ああん、ちょっと」
 「「「「えっ!」」」」
 一同驚いて声の主を見る。
 「ちょっとファトラどこを触っているのです」
 ファトラは事もあろうかルーンの胸を触っていた。
 「姉上、これは何ですか?」
 「これって胸に決まっているでしょう。あん、そんなに触らないで」
 逃げようとするルーン。
 「む、これはいかん!」
 突然ストレルバウが前に出る。
 「姫様。そのままそのまま!」
 「なぜです。ストレルバウ。ああだからファトラやめてって」
 「姫様。ファトラ様は初めて今までとは違った反応をしております」
 「だからなんなんです。ああんもうファトラったらそんなに」
 「ですのでもしかするとファトラ様が戻るヒントが見出せるかもしれません」
 「ですがストレルバウ。あなたちょっと目が怖いですよ」
 「何をおっしゃいますか、姫様。これは昨晩遅くまで古文書を解読していたためです」
 (嘘だな)(嘘よねぇ)(嘘どすな)シェーラ達は小声で感想を述べる。
 「殿下。私めもストレルバウ博士と同じ意見であります。どうかファトラ様の為されるがままにお願い致します」
 「ロンズまでそんな事を。やん、ファトラお願いだから」
 「さすが侍従長」小声でストレルバウ。
 「何もおっしゃいますな博士。このロンズ、援護射撃の術は心得ているつもりでござる」とやはり小声で答えるロンズ。
 誠は目のやり場に困ったがそれ以上にルーンの声が刺激的だった。
 かといってこの場を離れるのもまずいような気がして結局その場を動けないでいた。
 血圧は上がる一方である。
 誠がこの日二度目の失神をする前にファトラが口を開いた。
 「姉上、この気持ちのいいものは胸と言うのですか」
 「な、何を言っているのですかファトラ。あなたにもついているではありませんか」
 「えっ、私にもですか」
 「そうです。だから離しなさい」
 言われて片手をルーンの胸から自分の胸へ移す。
 「おおっ、これは!」
 「分かりましたかファトラ」
 ほっとするルーン。所がすぐにまたファトラが手を伸ばす。
 「ちょっと、ファトラ!」
 「そうです。ファトラ様もう少しですぞ」
 「ああ、そこではない。もっと上の方に。ええいまどろっかしい!」
 勝手な事を言うロンズとストレルバウ。
 「姉上、姉上の方が大きくて気持ちいいですね」
 「何を馬鹿な事を言っているのですか! ファトラ!!」
 閃光一線。ルーンの張り手が飛ぶ。
 ぱしっ!軽い音がした。
 「痛っ!」頬を押さえるファトラ。しかしもう片方の手は相変わらずルーンの胸の上だ。
 「大丈夫ですか。ファトラ!」慌てるルーン。
 「あっ、姉上どうされたのですか。おっとこの気持ちのいいものは…、姉上の…、わああすいません姉上。無礼な事をしてしまいまして。しかしなぜ姉上の胸を…」
 「ファトラ! 私が分かるのですか!」
 「何をおっしゃっているのですか、姉上。二人きりの姉妹ではございませんか。例え天地が裂けても我らの仲を裂くことはできません」
 「ああ、ファトラよかった」
 涙を流しながらファトラを抱きしめるルーン。
 「ファトラ様元に戻られたんですか」
 「おお、アレーレ元気そうじゃの。後でまた可愛がってやるぞ」
 「はい! ファトラ様」
 これはこれで感動的なのかもしれない。
 が、それでは物足りない者もいたようだ。
 「姫様このストレルバウ記憶がなくなりましたぞ! 是非その胸でわしの記憶を!」
 「殿下! ロンズは何も思い出せませぬぅ。この上は殿下の胸で私めの経験値を戻してくだされー」
 ルーンに駆け寄る二人。しかし
 「ええい。このうつけ共がぁ!姉上には指一本いや爪の先さえも触れさせはせぬぞ!」
 気合一発蹴りを放つファトラ。
 「うがぁぁぁぁぁぁ」吹き飛ぶ二人。そのまま衛星軌道へ到達する。
 「ふん、愚か者めが」
 「有難うファトラ,助かりました」
 「何をおっしゃいます、姉上。姉上をお守りするのはわらわの役目でございます。礼なぞ不要です」
 「ああん、さすがですぅ、ファトラ様ぁ」
 「はっはっはそうか、アレーレ。所で姉上、なぜ皆ここに集まっていたのですか?」
 「それはですねファトラ…」
 ルーンはゆっくり話し始めた。
 それを聞きながら誠はふと眠気を感じた。
 考えてみればこの二日間、特に昨夜は殆ど寝ていない。
 全て終ったんやな…。
 誠はそのまま睡魔に身を任せた。心地よい…。


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