鋼鉄の3姉妹 なかがき

 「あ、お姉さん遅れてすいません」
 「ふふ、遅れてないわよ。約束の時間までもう少し間があるわ。それにまだ姉さんも来ていないし」
 「ですがやはり待ち合わせている方より遅く着いたらお待たせすることになりますから…」
 「あなたって本当にまじめねえ。そんな事じゃ肩凝ってしょうがないわよ。それよりもどう?一杯?」
 「あ、あの、お酒はちょっと…まだ未成年ですので」
 「誰が未成年よ、誰が!」
 「す、すいません、すいません」
 「まあ良いわ。確かにあなたって子供っぽいところが多少…いやそのものかしら…」
 「は、はあ…。ところで本日はどういうご用なんですか?」
 「それは姉さんが来てから話すわ。あなたも二度同じ事を聞くのは面倒でしょ?」
 「別にそんな事はありませんけど」
 「(溜息をつき)そうね、あなたならそう言うわね。だけど私がちょっとだけ手間なんだけど」
 「そうなんですか?ではイフリータお姉さんをお待ちしましょう」
 「ふう…そう言って貰えると助かるわ…」
 (少し間をおきイフリータがやってきた)
 「待たせたな。マリエルがすぐに寝付かなかったので遅れてしまった。すまない」
 「大丈夫よ姉さん。遅れたと言ってもほんの少しだしイフリーナちゃんが来てたから退屈しなかったわ」
 「あのう私もいま来たばかり、痛い!」 (足を蹴られた)
 「(小声で)こんな時は私に合わせて姉さんが気にかけないようにするのが常識でしょ!」
 「え、そうなんですか?ん〜そう言われるとそうですねえ…(イフリータの方を向き)そうですよお姉さん。私達楽しくおしゃべりしてましたから気になさらないで下さい」
 (思わず頭を抱えるイフリーテス)
 「なるほど、これが気配りというものか。さすがイフリーテスだな」
 「(少々脱力しながら)気配りというのは正解だけどね…ふう…なんか何もしないうちから疲れてきたわ…」
 「大丈夫ですかお姉さん。肩でも揉みましょうか?」
 「(脱力したまま)有り難うイフリーナちゃん。大丈夫よ」
 「やはりお前は人と変わらないな。目覚めて以来ほぼ同じ刻を過してきたというのに差は開く一方だ」
 「姉さん前も言ったでしょう、焦っちゃ駄目だって。私達は感情制御の部分が少し違うだけでベースは(多分)同じなんだからほっとけば並ぶわよ」
 「そうですよお姉さん。頑張りましょう!」
 「そうだな。所で私達を集めたのはどういう理由だ?」
 「そうね…なんかやっと本題に入れるわねえ…」
 「え〜とぉこのお話も十章を越えたのでここらで前半のおさらいをするんですよね」
 「違うわ」
 「えっ、だってよく見たら上の方に『なかがき』って書いてありますよ?」
 「それわね、ストレートに表現することを嫌った作者の戯言よ。それにもう半分以上過ぎてるはずだって言ってたし」
 「では連載が始まって一年くらいになるのでその記念か?」
 「ますます違うわ。あの間抜けがそんな気の利いたことするはずないじゃない」
 「じゃあなんなんですか?」
 「それわね。第十章がアップされたのが昨年末、だけどもう六月でしょ。半年も間が空いちゃっているわけ」
 「そう言えばそうですねえ。作者さん風邪引いたり愛用のPCが壊れたりで大変だったみたいでしたからねえ」
 「なに甘いこと言っているのよ。確かに中編を書き上げたあと風邪を引いたし熱が出てその時だけは大変だったみたいだけど当然二月には治っていたはずよ。それにPCにしたってニュースから怪しげなファイルダウンロードしてノー○ンアンチウィルスのチェックでOKだったからって実行したら実はウィルス入り。それにOS破壊されただけよ。同情の余地はないわ」
 「は、はあ」
 「それに書き上げた中編SSだって『ふらっと☆すてーしょん』のdaicさんがわざわざ挿絵を描いてくれたというのにアップされたのはついこの間。これを怠慢と言わないで何と言うのよ!」
 「その件は確か後書きを一緒に書くとかなんとかで遅れてたと聞いているが」
 「ちっちっ、甘いわね姉さん。何があろうと〆切には間に合わせる、それがプロってもんじゃない」
 「あのうあの方はプロではないと思うんですけど…」
 「良いのよ。そんな細かいこと。それにねえイフリーナちゃん、あんな奴に敬語使う必要なんて爪の先ほどもないんだからね」
 「だけど一応作者さんなんだし」
 「良いの!」
 「は、はい!」
 「大体こんな下手な文章を読んでくれる人が少なくとも一人はいるというのに失礼よね」
 「誰だその奇特な一人とは?」
 「このホームページ、『えれくとら』の元さん」
 「なるほど彼はHPを管理している以上読まないわけにはゆかぬな。気の毒に」
 「そうよねえ。にも関わらず話は途中で止っているし、他のSSも全然書いていないしほんっとひどい話よねえ」
 「そう言えばブランクの間オフ会と称して酒を呑んでただけだったという噂もあるな」
 「あ、あのう打ち合わせをしてたって聞きましたが」
 「あれがそんな殊勝なことをするはずないでしょ。姉さんが言ったようにオフ会とか打ち合わせという名目の呑み会を開いてただけよ」
 「そうなんですか」
 「そうよ。大体こないだアップして貰ったSSだって書き上げたのは1月だけど書き出したのは昨年の11月。そしていま書いている中編だって設定を作ったのはなんと昨年の夏よ」
 「つまり実質的には今年になって新作は一つも書いていないと言うことか」
 「その通り!怠慢の一言じゃ済まされないと思わない?」
 「あ、あのもしかすると作者の人も何か理由があったのかもしれませんし」
 「イフリーテス、いまのは敬語にならないのか?」
 「言い方変えただけで基本変わってないから敬語と言っても良いんじゃない?」
 「すいません、すいません。私言葉遣い下手なもので、あの、その…」
 「いいわよもう。好きに言いなさい…だけどあなた妙にあの外道を庇うわね」
 「いまの主もやはり外道だからではないのか?」
 「それもあるかもしれないけど…そうよね、イフリーナちゃん可愛がって貰っているから遠慮してるんじゃないの」
 「そ、そんなぁ、別に可愛がって貰っているってことはないと思いますし…それにあの方はファトラ様のファンだと聞いていますが」
 「そう言えばそうだったな」
 「あのファトラ姫のファンって言うだけで『エルハザード』の世界では異端だけどあれは更に輪をかけているからね。大体この物語も『鋼鉄の三姉妹』って題が付いているのにファトラ姫が出てきたと思ったら主役みたいな顔して居座っているし」
 「お姉さん、『えれくとら』はファトラ様のファンが多いんですよ。それにいまのセリフがファトラ様のお耳に届いたらまずいのではないでしょうか」
 「大丈夫よ。分ってる?いまの部分カットだからね!」
 「あのういまのは誰に?」
 「気にしなくて良いわよ」
 「そうなのか?」
 「そうよ…え〜となに話してたんだっけ?」
 「イフリーナが作者に可愛がられていると言う話だったが」
 (イフリーナ慌てて否定しようとするがイフリーテスに先を越された)
 「そうそう、良いわよねイフリーナちゃん。作者だけでなくみんなに可愛がられているし、TVやCDドラマにも出演していて」
 「え、いやあれは私ではなく別のイフリーナさんだし、それならイフリータお姉さんはOVAにも出ていらっしゃるじゃないですか」
 「あれは私と同型のようだが私ではない」
 「だけどさ、あの作者だって姉さんのこと常日頃から美人だと言っているし何よりもこのサイトで行われたキャラコンでも一位だったし」(注:2000年実施)
 「あの時勝ったのは違うイフリータだ。それにあんな奴から好かれても嬉しくない」
 「あ、あのうお姉さん、一応主人公なんだしもう少し愛想よくした方が…」
 「まあ姉さんらしいとも言えるけどねえ。所でイフリーナちゃん、あなたいま『愛想よく』と言ったけど普段から気を付けているの?」
 「い、いえそんなことは。ただ皆さんといると楽しいのでそれで、あの」
 「あなたのそう言うところが皆に好かれるのよねえ」
 「何を言いたいのだイフリーテス」
 「ん〜…なんか私だけ扱いが悪いなぁとつくづく感じちゃって」
 「そんなことありませんよ。お姉さんがいなければ私達無事にロシュタリアへ着けなかったと思いますし」
 「私もそう思うぞイフリーテス」
 「ありがと。そう言ってくれるのは姉さんとイフリーナちゃんだけよ。ふう…OVAのファンはさ、イフリータと聞いたら姉さんの容姿を、TVファンならイフリーナちゃんを思い浮かべるじゃない。だけど私の場合は『イフリーテス?誰それ?』って感じでしょ」
 「そうなのか?」
 「違います!そんな事は絶対にありません!このお話でも一番活躍しているのはイフリーテスお姉さんだと思いますし私達が一番頼りにしているのもお姉さんだし、それに…」
 「もういいわよ。有り難うイフリーナちゃん。あなたは本当に優しい子ね」
 「え、あの、その…私お姉さんのこと大好きだし…えーと」
 「そうだイフリーテス。どんなことがあっても私達はお前の味方だ。忘れないで欲しい」
 「有り難う二人とも。そうよね私には姉さん達がいる。どんなことでも平気よね」
 「そうですよ!三人力を合わせればどんなことでもへっちゃらですよ!」
 「だがそれでもどうにもならないからロシュタリアへ来たのではなかったか?」
 「そ、それはその通りなんだけど…」
 「なんかテンション下がっちゃいますねえ…」
 「そうか? 所でイフリーテス、用件をさっさと済ませよう」
 「あのう、その用件って一体何なんですか?」
 「決まっている。酒呑んでばかりでさぼっているあのアホウをどつき倒しに行くのだろう?早くしないと遅くなるぞ」
 「えっ!それはちょっとまずいんじゃないですかお姉さん」
 「そうか?」
 「まずいとは思わないけど残念ながら違うのよ姉さん」
 「違う?」
 「ええ。用件というのは、さっきも言ったけどこのお話は半年も間が空いちゃったでしょ。それで読者の方々へ私達からお詫びしようって訳なの」
 「なぁんだそうだったんですか。そうですよね。よかった作者さんも気にしてたんですね」
 「と言ってもねえ本当は大分前に企画してたらしいんだけど」
 「宴会で忙しかったという訳か」
 「その通り。なんでも三月くらいにと思ってたらしいんだけど、PCが壊れたとか言い訳していたわね」
 「いいじゃないですか。遅くなっちゃったけどちゃんと心を込めてお詫びすれば皆さん分ってくれますよ」
 「しかしなぜ作者本人ではなく私達なのだ?こういうことは本人にきっちりと詫びを入れさせないと癖になるぞ」
 「そうなんだけどね。あんなむさいのが頭下げるより私達のように若くてぴちぴちした女の子がご免なさいした方がまだ許して貰えるでしょ」
 「あ、確かに。さすがですねお姉さん」
 「う〜ん、あのたわけに泣いて頼まれたからなんだけどね」
 「それで引き受けたという訳か?」
 「そうなの。分って貰えて嬉しいわ」
 「事情は分った。だが分らないことがある」
 「(笑顔で)なにかしら?」
 「なぜお前がそれを引き受けたか、だ」
 「えっ、そ、それは土下座までしてくるし、何となく哀れに思えて…それに」
 「イフリーテス、先程までお前が話していたことを考えるとそう言う結論は出てこないのだが」
 「う、そんなことは…」
 「それとも私の論理回路がおかしいのか?」
 「え、え〜と…ほらイフリーナちゃん、あなたはそう思わないわよね。お詫びするのに賛成だったしぃ」
 「はい、読者の皆さんにお詫びするというのはすごく良いことだと思いますけど」
 「けど?」
 「確かにさっきまでお姉さんが話されていた内容からは結びつかないと思いますよ」
 「ちょ、ちょっとイフリーナちゃん、あなたまでそんな…」
 「イフリーテス、私達だけでなく誰でもそう思うのではないのか?話の流れからすると『読者に詫びを入れる』のではなく『作者に焼を入れる』という方が自然だと思うのだが」
 「そ、そんなことないわよ…きっと」
 「それに作者に頼まれたと言うことはお前は会ってきたわけだな。何を話したのだ?」
 「何って…そりゃ色々だけど…」
 「そんなにいっぱいお話ししてきたんですか?」
 「ち、違うわ。大した時間じゃなかったわよ。私だって忙しいんだし…」
 「イフリーテス、お前は私達の中で物事を簡潔に、そして正確に伝える能力に長けていると思うのだが」
 「そうですよね。菜々美さんのお店でも誠さん達に私達が抱えている問題をすっごく分りやすくお話しされてましたし、やっぱりお姉さんって凄いですよねえ」
 (二人に誉められた上に見つめられ困ったような表情のイフリーテス。覚悟を決めたかのように口を開く)
 「あ、あのね…今後の展開とかを、どうするつもりなのかとかをちょっとだけ聞いただけよ。だけどはっきりした答えは返ってこなかったし…」
 「今後の展開?それは重要な事項だな。あのろくでなしは何と言っていたのだ」
 「だ、だからはっきりと答えなかったのよ。実は何も考えていないんじゃないの?」
 「ネタバレになるから言わなかっただけかもしれませんよ」
 「構わない。マリエルのことだけはきっちりと片を付けて貰わないと困るからな。イフリーテス、イフリーナ、行くぞ」
 「ま、まさかお姉さん、作者さんを小突き回しに行くんですか!」
 「そうではない。まずは話し合いだ。だがマリエルのことだけは暴力に訴えてでも何とかして貰う」
 「姉さんそれはまずいわ。姉さんが殴ったら大怪我するかもしれないじゃない」
 「大丈夫だ。いまの私はそんなに力が出ないから大したことにはならないだろう。それにもしも骨折とかしても両手の指が一本ずつ動けばキーを叩くのに不都合はない」
 「ね、姉さん、それはその通りかもしれないけど別に今日でなくってもいいじゃない。もう遅いし今度にしましょうよ」
 「いやこういうことは早めに手を打っておく必要があるらしい」
 「そ、それに姉さんは口べたでしょう。却って話がややこしくなるかもしれないわ」
 「だからお前に来て貰う。道中私の意見を伝えるからまとめておけ」
 「え、いや私これからちょっと急用があって…」
 「これから急用、ですか?」
 「そ、そうなのよ。急用だから早く行かないと急用にならないし。だから姉さん悪いけどまた今度にしましょ」
 「(イフリーテスの顔をじっと見つめ)もしかしてお前は私と作者を会わせたくないのか?」
 「え、そんなことないわ。いま会われたらまずいとか後にしてくれないと困るとか一言も言っていないわよ」
 「あのうお姉さん。いまそう仰ったように思うんですけど…」
 「イフリーテス、何か隠し事があるようだな」
 「そ、そんな…私隠し事なんて言った覚えないしぃ…」(うっすらと汗が滲む)
 「えぇ〜とぉ口に出したら隠し事にはならないと思いますが」
 「あ、あのね、そのね…」
 「イフリーテス!」
 「は、はい!」(思わず立ち上がるイフリーテス)
 「あら?お姉さん何か落ちましたよ」(そう言いながら封書を拾い上げるイフリーナ)
 「なんだそれは?」
 「あ、それは!ち、違うわ。決して誓約書とか議定書じゃないわよ!」
 「ほう、そうなのか」
 「そうよ。だからイフリーナちゃん、それをこちらに」
 「イフリーナ」
 「はい。なんでしょうか?」
 「読め」
 「ね、姉さん、いくら姉妹でもプライベートというものが…」
 「そこに書かれているものは全てお前に関わる事だと言うのか」
 「そうよ。私に対し書かれたものよ。だから」
 「イフリーナ、構わない。さっさと読め」
 「えっ!? ですがお姉さん宛のものならここで開けるのはまずいのでは…」
 「偉い!そうよねえイフリーナちゃん。私のプライベートな事だもんね。それを公にしちゃまずいわよねえ」
 「イフリーナ、私の言うことが聞けないのか」(目が据わっている)
 「は、はい!(同じく立ち上がる)読みます、読ませていただきます!え〜と…汚い字だなぁ…『契約書。私、Umaは『鋼鉄の三姉妹』が遅れていることについてイフリーテスを通じ読者の皆様へ遺憾の意を表したいと存じます。イフリーテスがその意を汲んで読者の了解を得られるような結果を出した暁には藤沢との展開を再考しても構いません』以上です」
 「イフリーテス」
 「はい!」
 「確かにお前のプライベートに関する内容だし、今後の展開についても明確にしてあるわけでもない」
 (ごくりとつばを飲み込むイフリーテス)
 「そう言う意味ではお前は嘘をついていない。しかし今の内容は私が感心を持つに十分なものだな」
 「そっかー、確かに作者さんはお姉さんと約束してませんもんねえ。だけどあの作者さんがお姉さんを騙すような事はできないと思うし…。実質的には誓約に近いですねえ」
 「あ、あのねやっぱり何でも作者の言うとおりにして甘やかしていたらまずいと思うし、何の見返りも無しに引き受けるのも癪じゃない」
 「それで?」
 「そ、それでね、私と藤沢様の事は枝葉末節みたいなもんでしょ?マリエルの件は脅しても口を割らなかったしだから仕方なくね…」
 「お姉さん、もしかして作者さんを叩いたんですか?」
 「いやさすがにそれはちょっとね。加減しそこなったら大変でしょ?取り敢えずこのお話が終わるまでは手を出さないでおこうと思っているわ」
 「確かにお前が殴ったらただでは済むまい。しかしマリエルの事はどうあっても話さないつもりか…面倒だが仕方ないな…」
 「お、お姉さん、やはり暴力はいけないと思うんですが」
 「さっきも言ったように指さえ動けば何とかなる」
 「あ、あの姉さん、確かにマリエルとそして私たちについては何も話そうとしなかったけど一応考えていると言っていたわ」
 「どういう事だ?」
 「今後の展開については未定の部分もあるけどラストは大方決まっているって」
 「え、そうなんですか?それで一体どんなふうに?」
 「だからそれは話せないって言い張るのよ。ただ悪いようにはしないって言ってたけどね」
 「なんかそれって悪役っぽいセリフですね」
 「私もそう思ったんだけどそれ以上のことは聞き出せなかったわ」
 「そうか…お前でさえ入手できなかったとなると後は力業しかないが、それでも口を割らなかったら無駄な時間を過ごすことになる…」
 「どうしましょうか…」
 「ここは取り敢えず作者の意向に従っておきましょうよ。貸しを作っておけば後々有利なこともあるかもしれないし♪」
 「それも一理あるが…イフリーナ、お前はその契約書を持って作者の所へ行け」
 「私がですか?」
 「そうだ。そしてこう伝えろ。『イフリーテスはマリエルの治療が終わるまで藤沢にちょっかいを出さないと約束している。途中で筋を変えるような事はせずおとなしく執筆に励め。それから私が納得できないようなラストだったらただでは済まさぬ』とな」
 「ちょっと姉さん、藤沢様の件は直接関係…」
 「イフリーテス、あの恥知らずに話の流れを変更させて収拾がつくと思っているのか?」
 「え、そ、それは…」
 「マリエルの治療の妨げになるようなものは全て排除する。却下だ」
 (項垂れるイフリーテス)
 「ではイフリーナ行って来い。また私が言ったことは決して脅しではないことも付け加えておけ」
 「は、はい…ところでお姉さん、読者の方々への謝罪は…?」
 「そうだな…イフリーテスが言うように貸しにはなるな。分った。私の方から謝っておこう。お前は早く行け。帰りが遅くなるぞ」
 「分かりました。じゃあお姉さんお願いしますね」
 「ああ、気を付けてな」
 (席を立つイフリーナを見送るイフリータ)
 「おいイフリーテス」
 「なに?姉さん」(意気消沈している)
 「どうした? 元気がないな」
 「はあ…姉さんらしいわね…思い通りに事が運ばなかったのでがっかりしてるだけよ。で、何用かしら?」
 「聞いての通りだ。私達から読者への謝罪を行おうと思う」
 「…分ったわ。元は私が持ってきた話だし貸しは貸しなんだからこのお話が終わった後でも取り立ては可能よね」
 「そうだな…まああのなまけものが番外編とかを書くとは思えないが」
 「もう姉さんったら人の気を削ぐようなことを言わないでよ。いいわ、ともかくあのうつけに変わってお詫びしましょう」
 「ああ。聞いての通り半年も休筆してしまった。本人もそのつもりはなかったそうだし、バカはバカなりに努力はしているらしいので大目に見てやってくれ」
 「なんか謝ってるんだか非難しているんだかよく分らないけど姉さんの気持ちは伝わったと思うわ」
 「そうか」(少し嬉しそうにしている)
 「では私からも。え〜と半年もお休みしちゃってご免なさいね。あののろまもようやく執筆活動を再開しているし余り遅くならないうちに第11章を出せるよう頑張らせますので待っててね♪ それから私と藤沢様を主人公にしたラブラブ恋愛番外編を書かせたいと思うのでみんなも応援してね」
 「イフリーテス、番外編は無理だと思うぞ。第一あの能無しに恋愛小説が書けるとは思えない」
 「いいのよ。みんなからプッシュされたら書けなくても書かざるを得ないでしょ」
 「まあそうだが…」
 「じゃあそう言うことで今回は本当に御免ないさいでした。11章でお会いしましょうね♪」
 「単に謝罪するだけなのに長々と済まなかったな。私の方からもきつく言っておく。ではまた会おう♪」
 「どうしたのお姉さん!セリフに『♪』なんてつけちゃって!」
 「どうしたって、ただお前の真似をしただけだがまずいのか?」
 「そう言うわけではないんだけど…ただそれならもう少し言い方やイントネーションを変えなくっちゃ」
 「そうか、単にコピーしただけでは駄目なのか。難しいものだな」
 「大丈夫よ。きっとお話が終わる頃には慣れているわよ」
 「だが書き手があれだけに怪しいものだな」
 「そうね…やっぱり行きましょうか」
 「そうだな、少しは痛い目に遭わないと学習しそうにないし」
 「あ、姉さん指と頭だけは叩いちゃ駄目よ」
 「分かってる、この話だけでも終わらせないといけないからな」
 「そう言うこと。じゃあ皆さん、またね♪」
 「次章で会えることを楽しみしているぞ」


〜某月某日 真珠楼にて〜


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