高速の死角

その五


 田波の、あまりの不甲斐なさに、肩を落とした神楽の面々ではあったが、いま少しだけ化け猫に対して優位なこの瞬間を、このまま、みすみす逃すようなことだけは、神楽としては、したくはなかった。
 「田波君救出作戦は、一時中断。なんとか、足止めだけでもして」
 菊島は、方針を、この事態を少しでも好転させる方向に切り替えたが、その、あまりにアバウトで、無策で、とっても社長的な指示は、悲痛に程遠く、半分あきれた気分がにじみ出た声で、田波と、桜木を除く全社員に伝えられた。
 「そういう訳で、そっちでなんとかして頂戴」
 それを受けて、蘭東が極めて事務的に、あまりにアバウトで、無策で、とっても社長的な指示を蘭東流に変換してから、バモス側に繰り返して伝えた。
 「了〜解」
 それを受けた姫萩は、離れ行く化け猫の乗っ取った車を見つめ、「さぁ、どうするべや」といった顔つきで、いつの間にかくわえていたタバコを、上に向けた。
 「で、どうする〜?」
 と、声の出し難い、くわえタバコをした口のまま、風切り音になんとか負けないよう出せる限りの声で、具体的な作戦の立案を協力するよう梅崎に求めた。
 「どうするったって、……」
 最後に、あまりにアバウトで、無策で、とっても社長的な指示を再度受けることとなった梅崎は、具体的な作戦の立案を、姫萩に協力するよう求められていることを無視して(まぁ、姫萩と一緒に考えても、いい案が浮かぶとは思えないが)、BRN−303を迷わず構え直した。当然、
 「撃つしかねぇだろうが!!」
 ブッ放つつもりなのだ。
 「ダッダダダダダッダダダダダダ」
 否、そのことしか頭に無いのだ。
 「オラオラオラオラオラオラオラオラ」
 ハッピー、ハッピー、ハッピー、それが梅崎の顔、満面に溢れている。それは、
 「無駄だって」
 幸福な気分の梅崎に水を差すかのように、ボソッと発せられた姫萩の言葉など、まったく耳に入らないほどであった。
 しかし、それよりも、
 「カンカンカンカンカンカンカンカン」
 敵車ボディで、跳ね返る弾の音の方が、梅崎の幸福な気分にホースで水をぶっかけていた。
 「チッ!!」
 大した傷さえも、つけれぬまま、射程距離外に出た化け猫の車に、梅崎は舌打ちをした。
 「夕、もう一度、至近距離まで近づいてくれ」
 「だから無駄だって」
 「うるさい」
 今度は、梅崎の耳にちゃんと入ったようである。
 ちなみに、姫萩の発した言葉が入った耳は、体が正面を向いていたので、右耳となる。ところで、何故こんなことを、一々説明するかというと、
 「キッキュ〜〜〜〜〜イィィィ」
 いきなりの急ブレーキで
 「うわっ!!」
 梅崎の左側頭部が、フロントガラスに打ちつけられそうになったところを、
 「ほいさっと」
 姫萩が、梅崎の頭に、左手で裏拳を思いっきりぶちかまして止めた一連の動きを説明するためには、位置を頭に入れてもらう必要が……、あっ、今なくなた。
 「いっちち痛って〜〜〜!!」
 梅崎は、シートに打ちつけられた右耳と、裏拳を入れられた左耳を、それぞれ手で押さえ、俯いて痛みを堪えていた。先程の教訓が、まったくいきていない。
 「ねぇ、大丈夫ゥ〜」
 2速に入れて、左の道に入った後で、やっと姫萩は梅崎の心配をした。
 「大丈夫って、何しやがる!!」
 頭部の保護の方式に、すさまじいまでの剣幕で、抗議する梅崎であったが、体を結び付けていたシートベルトが、顔に絡まっていて、いまいち迫力が無いというか、滑稽すらある顔に変形していた。
 「何って?ああしなきゃ、あんたの頭がフロントガラスをぶち抜いていたでしょ」
 「だからって、裏拳入れる必要がどこにある!!」
 梅崎からそう云われて、姫萩は少し考えたが、
 「エアバック、この車にも付くかしらね」
 相変わらずであった。
 もちろん直に、
 「栄子が金を出すと思うか」
 あきれた感じでツッコミがあったところで、
 「何?あたしを呼んだ?」
 当の御本人からの無線が入った。
 「あのなぁ、夕のヤツがなぁ〜」
 「はい、はい、労働環境改善の要求なら、しっかり労働してから云って頂戴。それよりも、作戦が引き続き続行中なのを忘れないこと。いいわね」
 言うことだけ言うと、蘭東は一方的に無線をきった。
 「聞かれてたわね」
 姫萩が、ボソッと、ちょっとイヤミたらしく言った。
 「チッ。で、夕、今どこに向かってるんだ」
 「速さじゃ、あいつに追いつけないからね。なんとか先回りしようとしてる最中」
 「じゃぁ、あたしが言う所で降ろしてくれ」
 「なんか思いついたの」
 そう問われて、梅崎はシコタマ打ちつけられた頭の両側を、また両手で押さえると、
 「あ〜、たった今。それから、後ろにケーブル積んであったよなぁ」
 と云って、左脚で巻き付けているシートベルトを押さえて、絡み付くシートベルトから右脚を抜いた。



 「まったく、ちゃんと仕事してから、ものを言いなさいっての」
 無線を切った蘭東は、進展どころか、むしろ悪化の方向にばかり進む事態に苛立っていた。
 しかも、その原因の一つに、自社の社員の不手際があるとすれば、脳に流れる血流量も増える一方である。
 一方、社長の方は、田波のことを心配してか、顔に流れる血流量をほんの少しだけ少なくしながら、
 「ねぇ、あの二人に任せといて大丈夫と思う」
 会社の方針と社員に不安を持つという、社長にあるまじき態度をとっていた。
 「大丈夫もなにも、今、使える車は、あれ一台限り。かといって、路上に降りれば、田波君や真紀の二の舞よ。誰が行っても、何の助けにもならないわ」
 普段に比べて、過剰なほどの血液が流れ込んでいる蘭東の脳が、即座に現状を分析し、そして、結果をなげやりに言った。
 「う〜〜ん」
 その分析結果に、菊島は、ただ腕組みをして、人様の机の上にあぐらをかくしかない。
 「はぁ〜〜っ」
 蘭東も、額に手を当て溜息をつき、ただ待つしかない。
 「きゅ〜〜」
 桜木も、現実逃避を続けるしかない。
 そして、実験場主任の環は、
 「あの〜」
 暗い顔をして尋ねるより他なかった。
 「はい、なんでしょう」
 蘭東に、いつもの口調が戻る。
 「いや、その、ホントに大丈夫なんでしょうか」
 クライアントなのだから、堂々とすればいいのに、悲しいかな、いつもの調子で腰が低い。
 「それは、勿論……」
 蘭東は、この事態も、計算の内といわんばかりの顔をする。それを見た、環は、押しきられまいと、蘭東が言い終わる前に、
 「しかし、……」
 と言って、一歩前に出ようとしたが、それを制するように、
 「おい、ちょっと、ホントに大丈夫なんだろうな」
 環の右肩をどけながら、研究所主任の山崎が、大声で割って出た為、一歩が半歩になった。
 上体が少し左に傾いた環の右横を、環より大きな歩幅で通り過ぎた山崎が、蘭東に詰め寄る。
 流石に、ここの事実上のトップである。存在感、威圧感が、その場にいる誰よりも、あった。
 蘭東の口が一瞬止まる。
 そして、
 「……勿論、契約通りの仕事をすることは、お約束いたします」
 環に言うはずの言葉の続きを、山崎に向かって言い直した。
 「そうして、もらわないと困る」
 山崎は、環を押しのけた左手をそのまま机につくと、それを中心として90度回り、蘭東の右側についた。
 「それから、……」
 「なんでしょうか?」
 山崎の方に向き直した蘭東の口調が、少し強くなる。
 「絶対に死者を出さないでもらいた」
 「ええ、もちろんわかっておりますわ。契約書にも、その様に明記されていますし」
 蘭東の口調の強さは、変わっていない。
 「違う、ウチの研究員のことを云ってるわけじゃない」
 いきなり山崎の口調の方が、強くなった。
 「アンタのトコの社員を、云っているんだ」
 何かと思った蘭東であったが、それを聞いて、顔から緊張が少し抜けた。
 「それには、心配に及びませんわ。我が社の社員の被害は、そちらには請求いたしま……」
 肩の力が抜けた滑らかな調子の蘭東の言葉に、何故か山崎は苛立っていた。
 「そういう事じゃない」
 山崎は堪えきれず、蘭東の言葉を遮った。口調は、さらに厳しくなる。
 「あれが、何で、誰のためのものか、さっき説明したから、わかっているだろう。政財界のお偉さん方はな、縁起をすごく気にするんだ」
 そんなことは、とっくに終わっているのにと、蘭東は呆れた。もちろん、それを口に出すことはなかったが、ただ表情には、それがうっすらと浮かんでいた。
 山崎は、それに気づいてか、いっそう苛立つ。
 「解っているのか。事と次第によっちゃ、そちらと、争うことにもなるかもしれないんだぞ」
 しかし、苛立てば苛立つほど、山崎を含めた研究員達の顔が、ランドセルの底にテストを隠した小学生の様になってくる。
 それは、黙々と復旧作業を続ける者や、データが映し出されるモニターをじっと見つめる者、化け猫に乗っ取られた実験車両を追跡するために、カメラを操作する者などは、表情筋が、一瞬だけ硬直した後、また直ぐに弛緩するといった具合で、そして山崎は、目線が固定と迷走を繰り返すといった具合であった。
 まぁ、さすがに、ホントの小学生の様な、高学年の女子にさえ気がつかれてしまう解りやすいものではなく、それは歳相応の微少な変化ではあったが、蘭東と菊島は、子供の隠したテストを確実に発見するために、X線を放射する母親の目をして、その点数までも、探ろうとしていた。
 大抵、こういう場合は、どちらも先に口を開こうとはしない。なぜなら、何気ない一言で、墓穴を掘ることを、十分わかっているからだ。
 であるから、えてして、
 「あっ、また止まった」
 こういう場合は、両者の中に、入りそこねた人物、つまり環が、発端となった。
 「またぁ」
 わざとらしさを、極力排除したあとが窺える口調と顔をしながら、蘭東が、腰だけをひねって、モニターを眺めている環の方を向き、そこから目線を、モニターに移した。
 モニターには、完全に停止している実験車両が映し出されていた。
 「チャンスじゃない。今のうちに、また追いつけるわよ」
 顔に少し明るさを取り戻した菊島は、あぐらをかいている机のコンソールを使って、監視カメラの操作を始めた。菊島が目にしている机の上のモニター画面が、次々と切り替わる。
 「しかし、アレね。こう何度も止まられと……」
 天井から吊り下げられているモニターから目を離した蘭東が、前髪を右手でかきあげながら、小声でつぶやいた言葉の最後を、小さく溜息を吐いてから、飲み込んだ。
 そんな蘭東の耳に、
 「今度こそ、大丈夫なんだろうな」
 その続きを言いたそうな山崎の声が入った。
 「ええ、御心配なく。死人が出るようなことには、なりませんわ」
 蘭東が、それに抑揚をおもっきりつけた言葉で返した。目は、にこやかだが、頬は動いておらず、硬いままだ。
 「保証はあるのか」
 山崎が、顔をモニターに向けながら、横目で蘭東を見た。
 「ええっ、車から降りさえしなければ、先ほどのようなことは、起こらないでしょうから」
 そう言った蘭東の顔は、嫌味に耐えながらも、落ち着きはらっていたが、
 「あっ、真紀ちゃんがいない」
 後ろで、コンソールを操作していた菊島の一言で、一変して不意打ちを食らったものに変った。
 「えっ、ちょっと、なに、それ!?」
 蘭東は、菊島があぐらをかいて座っている机の上のモニターを見ようと、菊島を払いのけて下に落し、急いでかぶりついた。
 「バッ、バッン」
 蘭東が、モニターと、机に、激しく手をついて響いた音は、室内にいる誰の耳にも届くものだった。
 ついでに、机と椅子の背もたれの間に、ラブリーなオシリと、スレンダーな太モモと、薄いムネが挟まって、かろうじて床に落ちることを免れた菊島が、
 「あっ、痛ッテテテテ」
 背もたれの角で打った後頭部をさすりながらの痛がる声も、それぐらいのものであった。
 「ねぇ、真紀は、どこいったの」
 モニターに映るバモスには、確かに、くわえタバコで運転する姫萩しか乗っていない。
 「そんなこと、知らないわよ」
 菊島は、両眼の目尻に涙を溜めた顔をして、頭だけを起こした。
 「たく、もう、あのバカ」
 蘭東は、さっきまで菊島が操作していたコンソールを、手元に引き寄せると、急いでボタンを連打し始めた。モニターに、実験場のあらゆる場所の引きの画が、映っては、切り替わっていく。ただ、焦っているせいか、システムの反応速度以上に、ボタンを連打してしる為、画面の切り替わりと、ボタンの音とが、合っておらず、また、そのリズムも事務仕事でみせる規則正しいものとは、程遠いものであった。
 一方、コンソールを無理矢理取られた菊島は、姿勢はそのままに、
 「夕、真紀ちゃん、どうしたのよ」
 姫萩と連絡を取っていた。
 「うん、あ〜、田波君が人質に取られた場所で、降ろした」
 「ねぇ、それ、ちょっと、どういうこと」
 「どういうことだ、これは」
 蘭東の言葉とは、全く逆方向に進んでいた事態に腹を立てた、山崎が、菊島に覆い被さるようして、文句を言ってきた。
 もちろん、それは、クライアントとして、当然の行動であるわけだが、
 「うるっさい、オッサンあっち行け!!」
 菊島は、そんなことは、お構いなしに、背面ドルフィンキックをする要領で、山崎の顎を、両爪先で蹴り上げた。
 菊島理論でいくと、ただでさえ気が立っているところに、いきなり、青筋立てた中年の顔を、距離十センチまで近づけるのは、万死に当たるという訳だ。
 まぁ、そりゃ、世間の人には通用しない勝手な理論だが、キックの方は世間の人にも通用する。
 「ウッグ」
 それは、たとえ威力は弱くとも、当たり所がさえよければ、相手は、脳を揺さぶられるため、ほんの少しだが混乱するのだ。
 で、この場合の相手である山崎は、どうかというと、蹴り上げられた顎を片手で押さえ、痛みに耐えてるため細目になっている目が、涙でぼける光景の中に、さっきのキックの反動で、キャスター付の五脚の椅子に乗ったまま、後方に滑っていく菊島を捉えていた。
 「キャラララララ」
 滑っていく椅子の上で、菊島は、姫萩を相手に、携帯で連絡を取り続けていた。
 「カッチャタ」
 そして、椅子は、後ろにいた環が受け止めたことで、止まった。
 「ウン、あっ、ども」
 「あっ、ああっ、どうも」
 真上に顔を向けて、軽く礼を菊島にされた、環の目は、もう、ただ、ただ、見るためだけにしか使われておらず、表情で感情を伝える機能の方は、ため息をついた時のままで停止していた。
 「で、真紀に言われたことを実行して……」
 山崎に、謝りもしない菊島を見ても、もう環は、なにも思わなくなっていた。ため息の連続が、環を、当事者であるという自覚から、遠ざけていた。
 「痛っうううう〜〜、こら!!」
 山崎の叫び声に、菊島が、五月蝿そうな顔をして、携帯を当てていない方の耳の穴を、人差し指で塞ぐの目にしながら、環は、また小さくため息をつく。
 そして、突然の
 「うるさ〜〜〜いっい!!」
 ヒステリックな蘭東の声にも、環は、ビックッとするようなことはなかった。一方、山崎の方は、その常識では考えられない態度に、腹を立てる為の回路を瞬間だが遮断されてしまい、また周りの研究員達といえば、ただ呆気に取られているだけだった。
 そして、この一瞬の静寂の中、蘭東は、再びモニターに向きなおり、マイクを手にした。



 「真紀、あんた、そんな縁起悪いところで、何やってるの」
 田波が、連れさらわれた場所の近くに設置されているスピーカーから、蘭東のイライラした声が流れた。
 「あっ、栄子か」
 「『あっ、栄子か』じゃ、ないわよ。あんた、さっき、あんな目にあったばっかりなのに、何考えてんの」
 「ちょっと、今いそがしいんだ。あとにしてくれ」
 「あとに出来ると思ってるの、真紀。だいたい、あんた、そこで何やってるの」
 蘭東の見ているモニターには、梅崎の背後しか映っておらず、そのことが、蘭東をいっそうイライラさせていた。
 また、蘭東の周りは、そのイライラが、バリアでも張ったのか、
 「カララララララララララ」
 キャスター付の椅子が、環に押されて床の上を滑る音以外は、一つの物音もしていない。ちなみに、椅子を押してくれと頼んだのは、菊島だ。
 「ねぇ、ちょっといい、栄子ちゃん」
 椅子が机に到達すると、体育座りでチョコンと座っている菊島が、トントンと、人差し指で、蘭東の背中をつついた。
 「なに、社長」
 顎を右肩にぶつける様にして振り向いた蘭東の顔には、落ち着きというものが、あまりなかった。
 「夕ちゃんから、真紀に連絡があるって」
 携帯を、さっきまで蘭東の背中を突ついていた中指で指差す。
 「たく、なに?」
 蘭東は、菊島から携帯を奪い取る様して掴むと、
 「真紀、夕から連絡よ」
 さっきより荒げた声と共に、マイクを引っ張って、顔の前で、携帯とくっつけた。
 「あ〜、真紀ちゃん、もうちょっとしたら、化け猫がそっちいくから」
 「了解」
 モニターには、帽子の前のつばを、親指でちょっと上げて、カッコつけている梅崎の姿が映る。
 「ちょっと、化け猫が、そっちいくって、どういうこと」
 向かい合わせて、くっつけていたマイクと携帯を、今度は、蘭東自身の口に向かい合わせた。もし、ここに両本人ともいれば、マイクと携帯が、両人の首根っこに持ち替えられて、同じようなことになっていたであろう。
 無論、
 「むこうが、ちょくちょく止まってくれたからねぇ」
 「夕に頼んだんだよ」
 こんな返答を、目の前でしては、そのまま気管を握り潰されるに違いない。
 事実、
 「何考えているか、訊いてるのよ」
 蘭東の両手の甲には、血管が浮き出ていた。
 だから、
 「ろ〜ど〜かんきょうかいぜん」
 「労働環境改善」
 二人の声が、感情を逆なでするハモる様な返答でなかったとしても、
 「何云ってるの、あんたたち」
 蘭東が、一時中断後、続行を命じた作戦を、
 「田波君のきゅ〜しゅつ」
 「田波君の救出」
 梅崎の足元にころがる、御札を接続したケーブルの束と、
 「だったら、バモスに乗ったままで、なんとかしなさい」
 バモスが、脇道に入ったことから、
 「真紀ちゃん、そっち行ったよ」
 「よ〜〜〜し!!」
 二人が、どうやって遂行しようとしてるかに、
 「ちょっと、逃げなさい、真紀」
 今の蘭東が、気がつかないのは、仕方なかった。
 かわりに、蘭東が、かなり興奮してたことで、逆に少し冷静になって、一歩引いて事態を眺めていた菊島は、
 「もう、遅い」
 と言って、クロスボウを構える梅崎を見て、
 「あっ、まさか!?」
 「あっ、あ〜〜っ!」
 気がついて、驚きの声をあげた。
 ちなみに、二番目の声は、菊島と同じく、逆に少し冷静になって、一歩引いて事態を眺めていた環のものであることを、付け加えておく。

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