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しおり
「何読んでるんだ、未紅?」
「ん? 麻生太郎の『とてつもない国』」
「ときどき難しいの読むよな、お前は。あれ、それは?」
ユウの指差すのは、未紅の持つ本のページに挟まれた赤い小片。
「しおりだよ」
それは一枚の楓の葉。
ずっと本に挟まれるしおりとして働いていたのだろう、すっかり水分は飛んでパリっとして平たくなっていた。
「なんでまたもみじの葉?」
「この赤い色が良いのよね。私の好きな色なんだ、赤って」
「ふーん……それって未紅って名前と関係あんのかな?」
「未だに紅くなれない、ってこと? どーなのかな?」
「オレが知るかよ。なんとなく思っただけ」
「そ。でもさ」
「ん?」
「もしもアタシが赤の中の赤、っていうか紅になったって思うほどの大人の女になったら、ユウはびっくりする?」
「あー、それはない。だからびっくりもしない。そんなことよりマックでは100円で色々食えるらしいぞ」
「その唐突な話題の切り替えは色気より食い気と言いたいのかな、ユウ?」
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