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細かいこと?

 
 「ねぇ、ユウ?」
 「ん?」
 「ねぇ、なにか感じない?」
 言って未紅はユウの前でクルリと回ったり髪をかきあげたりする。
 「……目の前をうろちょろするな」
 ごす!
 「グーで鼻っ柱を殴るか、フツー?!」
 「フッフッフッ。ユウ、お前は未紅ちゃんのそんなところも気づかんのか?」
 その声にユウは、未紅は振り返る。
 視線の先には、不精ひげを生やした同級生の姿が一つ。
 「あら、春海」
 「なんだよ、春海。気づくって何のことだよ?」
 春海はそんなユウに小さく微笑み、続ける。
 「ほら、秋月の髪。耳のところをちょっと切って短くしてあるだろう?」
 指摘され、ユウはじっと未紅を見つめる。
 しかし小さく首を傾げ、今度は眼鏡を外して目を細めて彼女を観察した。
 「……そうなのか?」
 「そうよっ」
 「それだけじゃない。秋月は今日、うっすらとルージュをひいているだろ」
 再度指摘され、ユウは今度は
 「……あー」
 「反応薄っ!」
 未紅にツッコミを受ける。
 「しっかし、春海。良くお前は気づくなぁ」
 「当然のことだろう? ユウが鈍すぎるだけだぞ、なぁ、秋月?」
 「そうよ、ユウがニブちんなのがいけないのよっ」
 「ニブちんって…お前なぁ」
 何とも反論しようの無いユウに、春海は再び問うた。
 「じゃ、俺を見て何か気づかないか?」
 ユウと未紅はしばし春海を見つめ、そして同時にポンと手を叩いた。
 「「口紅塗ってる」」
 「正解。色気のある男にって触れ込みで発売された新製品なんだぜ。どうよ、おい?」
 2人はその答えを即答。
 「「それは理解できない」」
 「Σ( ̄□ ̄;」

 結局、世間的にも一時的なブーム(2006年)で終わったらしい。


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