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達人のこと
「ねぇ、ユウ?」
「ん?」
「あれ、やったことある?」
夕方の商店街で人ごみの中を歩く二人。
未紅が指差したのは、アミューズメントパークと書かれたいわゆるゲームセンターの、入り口に居を構える筐体だ。
それには『太鼓の達人』と書かれている。
「いや、ないな」
「やってみようよ」
「………」
見るからに「面倒くさい」オーラを立ち上らせるユウに、未紅はこう一撃を加える。
彼の背負うギターのケースを見つめながら、
「リズム感がないから自信ないの?」
「どんとかかってこいや!!」
キレたユウは筐体に駆けて行く。
その後ろをニヤリと微笑んだ未紅が追いかけたのだった。
ちなみに最高得点に登録されていたのが、同級生である春海であることに気づいたユウは、その後延々と挑戦しつづけたそうだがとても追いつけるスコアは出なかったそうな。
そしてこれが。
春海をドラマーに誘うプラグだったと、後に未紅は語っている。
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