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夏のプールの話
青い空。
白い雲。
輝く太陽の熱すぎる光を受けて、目の前には水面がきらきらと光っている。
「あっつー」
額からにじむ汗を二の腕でぬぐいつつ、オレは改めて水面を見つめた。
ビーチボールや浮き輪を手にした女の子達が眩しい。
学校のプールでは絶対に見られない、色鮮やかな、そしてちょっと大胆な水着が新鮮だった。
ここは地元から電車で30分ほど行った所に今年出来たリゾート施設。
そこの一番の売り物である、全長800mの流れるプールだ。
未紅の奴に無理矢理連れてこられたのだが、なかなか良いものである。
何よりこぅ、目に入ってくる景色が素敵だ。
で。
当の未紅はと言うと、まだ着替えから出てこないわけで。
まぁ、良いや。素敵なウォッチングを楽しむ時間が増えるというものだ。
「ちょっとユウ。鼻の下伸びすぎよ」
背中にかけられるのは僅かに怒った声。振り返ればそこには水着姿の未紅が仁王立ちしていた。
「アタシの水着姿を見て伸ばすんだったら許すけど…」
そんな彼女を一瞥。
両手を腰に添え、あんまり大きくはない胸を反り、勝気な笑みを浮かべている未紅。
「あー」
……アレだ、目の前で堂々とされてもなぁ。
恥じらいみたいのがないものかね。『ねぇ、ユウ。どう…かな?』とか言いながら胸を隠していたりさ。
やれやれと、ジェスチャーで首を横に振るオレを、
「ぐはっ!」
どばしゃ!
未紅は問答無用でプールへとオレを蹴り落とした。
「なによっ、その態度はっ! もっとちゃんと見なさいよ」
案外速い流れに流されつつもプールサイドに這い上がるオレを見下しながら、未紅は怒鳴りつけてくる。
「あんなに悩んだのがバカみたいじゃない」
「ん? なんか言ったか?」
「なんでもないっ!」
炎天下にいるせいか、顔が真っ赤な未紅。大丈夫か??
オレは改めて彼女を見つめた。
いつものツインテールは水に入るということからだろう,髪は解いて頭の後ろにお団子状に1つにまとめている。
案外白い肌を包むのは、淡いピンク色のツーピースだ。太陽の光を背中から受けて、オレの位置からは彼女自身が薄く輝いて見えた。
腰周りに肉が無駄についていればからかってやろうと思ったのだが、凹むところはしっかり凹んでいるのが意外だ。
「ふむ」
まじまじと、見つめる。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……そんなに見ないでよっ!」
「ぐは!」
ばしゃ!
またプールへ蹴り落とされた。
見ろと言ったり、見るなと言ったり。
”ったく”
水に沈みながら、オレを追ってプールに飛び込む未紅が見える。
その後には相変わらず眩しく輝く夏の太陽。
今日も暑くなりそうだ。
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