ペルソナ達の午後
飾りじゃないのよ履歴は♪ 絢夏降臨

 「なぁにやってるのよ、姉さんは」
 あっけらかんとした新たな声に、春菜の手の力が緩んだ。
 春菜は視線を雪音から背後へと移す。
 そこにはショートカットの似合う、やや派手めな少女が一人。
 「絢夏……だって雪音ちゃんがユーザーさんのことを酷く言うから」
 「姉さんはユーザーの奴を美化し過ぎだってば」
 苦笑いで絢夏。
 「ユーザーだって普通の人間。雪音っちの言葉が信じられないんだったら、システムフォルダにある履歴フォルダを見てみなよ」
 「………だって」
 「ユーザーは姉さんと他数名の前『だけ』ではいいカッコするんだよ。良いから見てみなってば」
 絢夏の言葉に春菜は隣のフォルダを覗いてみる。
 そこにはインターネットサイトの履歴ファイルが時系列ごとに並んでいる。
 彼女はユーザーの前から退出した後の時間、すなわち雪音や絢夏の起動時間の参照サイトに目を通した。
 するとそこには、
 『女子高生動画の杜』『いけない☆ロリロリ画像』『もっこりアニメ動画クラブ』などなど。
 明らかに潔癖症な春菜には受け入れがたい系列のページ履歴が見て取れた。
 「どう、姉さん?」
 絢夏に問われ、春菜は無表情に頷く。
 今ので彼女のユーザーに対する親密度が500は減ったのが明らかだ。
 具体的に言うと、セリスがユーザーを無視するくらいの低下だ。
 「そんな。ユーザーさんが……信じられないわ。ロリって……もしかして変態さん?」
 ぶつぶつと自分の世界に入って呟く春菜に、雪音とくーは安堵の吐息を吐く。
 「ありがとー、絢夏っち!」
 抱きつく雪音。
 「姉さんもこの思いこみの激しさがなければ良いんだけどねー」
 雪音の頭を撫でながら絢夏は苦笑い。
 「姉さんの制裁はおっそろしいものね。ギリギリ間に合ったようで良かったわ」
 「うん。くーならぬいぐるみだから平気だけど、アタシは三日は寝こむし」
 「ボクだって痛いものは痛いです」
 「そうかそうか。ところで雪音っち?」
 「ん?」
 雪音は笑みの消えた絢夏に向く。
 「ウィルスって、何のウィルスだったの?」
 「今、世間を騒がせてるMSブラスターだって。姉上のところに届いた警告メールに書いてあったわ」
 「警告メール?」
 いぶかしむ絢夏。
 「うん。プロバイダーからの警告でね、『MSブラスターというウィルスが蔓延しています。セキュリティを万全にしてください』ってきてたの」
 「乙音様はメール見て、『つまらん、お前の話はつまらん』って叫んで寝ちゃいましたけど」
 「大滝秀治かよ」
 くーの付け加えた言葉に絢夏は眉間にしわを寄せる。
 「それってウィルスに乗っ取られてるんじゃ…?」
 「まさかぁ、アタシの姉上に限ってそんなことは……ありうるわね」
 「そうですね」
 顔を見合わせる雪音とくー。
 「それにさ、ウィルスって…一匹だけなの?」
 「「へ?」」
 絢夏の純粋な問いと同時、三人と一匹を取り囲む複数の気配が生まれたのだった!


≪次回予告≫ 
なんか合わなくても良い危機を乗り切った一人と一匹。
しかし戦いの序曲は始まったばかりだった!
迫り来る恐怖に乙女達はどう動く?
次回『藁のように殺すぞ! 観秋発現』
セキュリティはしっかりね♪

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